先日海老名市長選挙に当選した内野優氏が、現在海老名市議会で審議が始ま
ろうとしている海老名駅前デッキのダイエー方面への延伸事業について、審議
の中断を求める要望書を現市長に提出しました。
一部の新聞はそのことの報道はしたものの事態の周辺事情を説明しようとし
ないので、「何かまた海老名の政治がモメているなぁ。」という印象しか市民
の皆さんに与えないのではないか?そんな思いもしますので私の方で分かる範
囲で説明を試みたいと思います。
まず、現職の亀井市長の任期は今年12月24日まであります。しかしそれより
45日も早い、11月の9日に選挙が行われたのはなぜでしょう。それは8年前の市
長選の混乱から12月の歳末に選挙が行なわれることになった市長選と元来10月
に行なわれてきた市議選を互いに時期を真中あたりにずらして同時にやってし
まおうということになり、前回の選挙から市長の任期より一ヶ月以上も早いこ
の時期に選挙が行なわれるようになったのです。そしてその結果市長選挙が終
わった後も前任者の任期が45日もの間残るという現象が生まれています。
今回の市長選挙では亀井市長の市政運営を批判する形で立候補した内野氏が
当選しました。よってこの45日間は新しい市長(予定者)が決まりつつ、その
新市長とは考えの違った従前の体制の中で市政運営が行われ、議会まで開催さ
れるという、とても微妙な状態となっています。
今回内野氏が問題としているのは市が事業主体となって駅前のデッキを延伸
し、ダイエーの前までもって行こうとする工事の件であります。しかしこの事
業、すでに予算組は今春の段階で議会が承認し、それに基づいて建設業者を選
ぶ入札まで終わっている案件。ここで始まる12月議会ではこの入札による工事
請負契約を締結することについて議会の承認を求める手はずになっていました。
内野氏は選挙を通じて「駅前開発については否定するものではないが、市民
的なコンセンサスが充分でない。」と、駅前開発全体についてとても微妙なニ
ュアンスの発言をしてきました。つまり「理解を得てから“やる”。」という
ことに他ならないと私は受けとめましたが、一方の対立候補である三田氏がこ
れまで駅前開発を強力に推進してきた亀井市長の後継者を公言していることか
ら三田イコール駅前開発積極派。これに対抗する内野氏はコントラストとして
消極派、つまり駅前開発はもうやらないのだという印象を多くの市民に与え、
当選したものと私は感じています。
アンチテーゼを掲げて市長になった以上、現職の政策をそのまま引き継ぐよ
うなことはできないし、「俺が登庁するまで重要な案件には手をつけるな。」
というのが内野氏の思いだろうし理解できなくもありません。
事業の概要について、私が議員をしていた頃までの情報をもとにここでご説
明したいと思いますが、駅前のデッキをダイエー前(中央三丁目地区と言うべ
きか?)まで延伸するのにかかる費用はおよそ5億円。入札によっておそらく4
億数千万円くらいまで圧縮できると思いますが、これに対して国の補助を受け
られるのが約2億円といったところ。それに小田急が建設している駅前の巨大な
マンションにも接続することから小田急側からも負担金を頂きたいところです
が、小田急側からすれば
@そのようなデッキをつないで頂かなくてもマンションは完売できる。
Aビナウォークにお客を誘導したいのにダイエー側にデッキを延伸されては売り
上げにマイナス効果がある。
という二つの理由から負担金の拠出にはNo。
しかし海老名市としては何とか小田急を説得してこの事業のためと限定しな
い協力金という形で小田急側からそれなりの負担を求めることに成功しました。
その結果この事業に関わる海老名市の持ち出しは2億円程度かと思われます。
私見を言うなら、2億円の負担は決して小さいものではありませんが、これ
によって中央三丁目地区の経済的な魅力は確実に上がるであろうし、ダイエー
の撤退というような最悪の事態を逃れるためにも私は有効な施策であると考え
ています。
例えば、駅前デッキの建設でこれまで20億円弱の自前のお金を使った海老
名市ですが、それによってビナウォークができ、年間3億円以上の税収が生まれ
ており、雇用の創出を始め経済的な効果は投資した額を近い将来回収できるも
のと思われます。
さて話を元にもどしますが、このデッキの延伸事業についてはすでに建設工
事の請負業者を決めるための入札が行なわれ、あとは議会の承認を得て業者と
の契約を締結するばかりという状況まで来ています。
待ったをかけたい内野氏の気持ちも分からないではないのですが、ここまで
来て契約を延期したり破棄するようなことでもあれば莫大な違約金の支払い義
務が海老名市(市民)に課せられることになるものと思われます。当然内野氏
もそのようなことは承知の上で待ったをかけたものと思いますが、亀井市長側
は予定通り12月2日から始まる議会にこの議案を上程し、議会もその審議に応ず
る構えのようです。
えらく長い日記になってしまいましたが重要な案件で、かつ市長選の無効申
したてまで行なわれている微妙な時期だけに内野氏にも亀井市長にも偏らない
ように配慮したつもりで書きました。
そして駅前開発に限らず行政施策に対して市民的なコンセンサスを得るとい
うことは現代政治にとって最重要課題であると思います。そういった意味にお
いては海老名の駅前開発については、市民の合意形成が充分でないことは私も
議会の場で再三申し上げてきました。
現にこのほど完成した駅前広場についても出来上がってみたら当初我々に示
された設計と大幅に形が変わっていることに気づかされるのですが、市民の多
くはそのことにすら気付かないのではないでしょうか?
この日記を読んで頂いている市役所職員の方は多いようですが、もし記述に
間違いがあったならご指摘を頂ければ幸いです。大きな利権もからみますし、
納税者の賛否も分かれるところ、そして巨大な民間資本相手に渡り合う担当職
員の方のご苦労も理解できます。できればことを慎重かつ平穏に運びたいとこ
ろでありましょうし、こんなふうに私が駅前開発のことを書くことに対して快
く思わない方もいるかもしれません。でも納税者に対して知らせることは私た
ち政治に携わる者の使命であることをご理解頂けたら幸いです。そしてホーム
ページというとても便利な媒体ですから政治家の皆さんも選挙前だけでなく日
常的に大いに活用して欲しいと、今は一有権者として思います。
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